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シリーズ:学生突撃レポート

Vol.012 桜島フェリー

1.はじめに

写真1 桜島フェリー(サクラエンジェル)

九州の南端に位置して桜島を背景に活躍しているのが桜島フェリーである。フェリーへ乗り込み桜島へ向かっていくと、だんだん近づいてくる桜島の大きさに圧倒されて思わず息を飲んでしまう。およそ15分の航海だが、手軽に船旅気分を味わえることも魅力的である。

今回は学生突撃レポートとして、桜島フェリーの運航に携わる方々にインタビューを行った。

2.桜島フェリー概要

昭和9年、旧西桜島村の生活航路・通学航路として桜島フェリーは運航を開始した。これを引き継ぐかたちで、平成16年11月の市町村合併に伴い、鹿児島市の4番目の公営企業となった。フェリーを利用する層として、桜島や市街地に住む地元の方々の利用が多いのはもちろん、薩摩・大隅両半島を結ぶ海上交通機関、鹿児島市地域防災計画における救難船舶として重要な役割を担っている。また、九州新幹線の全線開業により、観光客の数が多くなってきており、海外からも多くの利用者が訪れるという。年間利用者数は車両約150万台、乗客約500万人に上る。運航形態は24時間、166便である。

平成25年6月末現在、正規雇用職員90名、定年退職者の再雇用等の委託職員35名の計125名の船員で運航を行っている。その他に、運航管理者や技術顧問が各1名、事務職員が30名、窓口委託職員が10名である。また、桜島フェリーの保有数は、6隻(二層積み4隻、一層積み2隻)である。そのうち定期運航で走っているのは5隻であり、1隻は保守整備等で係留して輪番で運航している。錦江湾(鹿児島湾)は、大きな波が起こることは少なく、波を切る必要がないため、平底の船型を採用している。航海中の動揺も少なく、乗客にストレスを感じさせない。

図1 桜島フェリー航路

桜島フェリーは地元の人々、および薩摩・大隅両半島を結ぶ海上交通機関であるが、それ以外に観光を目的とした運航も行っている。図1に示すように、鹿児島─桜島間の定期航路の他、よりみちクルーズを毎日運航している。これは通常の航路とは異なり、鹿児島港→神瀬→大正溶岩原沖→桜島港と湾内を大きく周るので、より船旅を楽しむことができる。これとは別に不定期ではあるが鹿児島湾内周遊航路もある。フェリーに乗って鹿児島湾を周ることができるので、観光ルートに入れても面白そうである。夏になると納涼船も出港し、水中花火やビアガーデンを楽しむことができる。平成24年に霧島錦江湾国立公園が誕生したのを機に錦江湾の湾奥を巡る錦江湾魅力再発見クルーズを開始して人々の生活の足としてだけでなく、観光面の充実を図っている。さらに、貸切船を利用すればクルージングや船上パーティーなど楽しみの幅も広がる。

3.運航を支える人たち

3.1 人や車の誘導

写真2 誘導の様子

前述したように、桜島フェリーは年間約150万台の車両と約500万人の乗客を運んでいる。これらをスムーズに誘導することで運航も円滑に行われる。そのためのコツとして、誘導するときは乗客の目を見て、分かりやすく伝えるようにしているそうだ。車で来る人達の中には、自分の判断で駐車しようとするものも少なくはないらしい。そうなると係員の指示も伝わらず危険な場合もある。乗客の目を見て伝えることで指示を確実に伝えることができ、より安全な誘導が可能となる。また、車の配置にも気を付けている。大型車が来れば船の傾きを考えてバランスよく誘導し、風が強い日は、しぶきが車両甲板内に入ってくることもあるので、車にかからないよう配置する工夫がなされている。さらに、火山灰が降った場合、灰を水で洗い流すため甲板が濡れてしまう。そのためすべらないように注意して誘導している。全てが利用者のためであり、安全を一番に意識して誘導している。

3.2 船内設備

写真3 優先席

ここでは電気推進船サクラエンジェルについて紹介する。桜島フェリーでは、平成15年からいち早くバリアフリーを取り入れている。平成23年に就航した電気推進船サクラエンジェルは、車いすや年配の方のために、展望席まで続くエレベーターがあり、通路も広い。優先席や多目的トイレ、点字、自動ドア、授乳室等もあり、乗船者が快適に過ごすことができる。

機関室はエンジン等が設置され、一般の乗客は入れない。機関室のコントロールルームで機関の様子をモニターで監視しており、異常があればすぐに対処できる体制を取っている。

3.3 離着岸

通常、フェリーは10.3ノット、プロペラ回転数毎分300回転で運航している。着岸に入る時は、防波堤の約400m手前から減速に入り、250回転まで落とす。そして防波堤を過ぎて100mぐらいでデッドスローに入り、180回転まで落としてすぐに中立させる。この時に注意するのは回転数が指示通りに落ちているかを確認することだ。自分では落としたつもりでも実際には落ちていないということもあるという。しっかり回転計を見てエンジンの出力が落ちているのを確認する。自分で行った操作をしっかりモニター等で確認することが、もしもの時の事故防止にもつながっている。この確認という動作は船の運航上とても重要な要素である。

その他に注意しているのは風や潮汐だという。風で船が揺れたりすると、岸に寄せる際にバランスを崩してしまう。また、潮に流されて他の船にぶつかってしまう。そうならないように風や潮の流れをしっかりと読むことが重要である。接岸・離岸は操船の中でも神経を集中して行う操作で、感覚等も重要な要素となる。桜島フェリーの船長らは熟練の腕でこれを行っている。

3.4 欠航対策

桜島の噴火や台風等の自然災害対策も重要である。桜島フェリーでは、海上運送法の安全管理規程に基づいて運航基準を作っている。欠航の基準は風速17m/s以上、波高0.8m以上、視界300m以下の時と定められている。台風の場合、台風接近マニュアルがあり、対処方法が細かく決められているが、海上保安部から指示があった場合はそれに従う。また、桜島が噴火し、避難が必要な場合は市からの連絡がある。そのため独自で判断を下すのは台風ぐらいだそうだ。地元の人の足を守りつつ、安全性を考慮して判断することを心がけている。

4.電気推進

図2 桜島フェリー概要図

桜島フェリーは平成23年3月、新しく電気推進船"桜島丸(サクラエンジェル)"を導入した。現在、日本で最も大きい電気推進のフェリーである。電気推進船を取り入れた主な理由は以下の三つである。
① 20年以上使い、最も古い櫻島丸の代替船建造時期だったこと。
② 鹿児島市で環境に配慮した政策が進められていたこと。
③ 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)が環境に優しいスーパーエコシップの建造を支援していたこと。
これらが重なり、九州新幹線全線開業の時期に合わせて電気推進船を導入することに決まった。

写真4 ポッド型二重反転プロペラ
写真5 電気推進船の操舵室

在来船との違いを紹介する。まず、大きな違いはエンジンの配置である。在来船ではディーゼルエンジン2台で船首、船尾に配置されたプロペラを駆動している。電気推進船では図2に示すように3台の発電機につながったモーターでプロペラを駆動している。通常は2台のみ使用し、強風時などの特殊な場合に3台全てを使用する。電気推進を用いることで抵抗の小さい船型と二重反転プロペラ等の省エネ装置を採用することで燃費は大きく改善され、同規模の在来船と比較すると時間当たりの燃料消費量が約18%削減したという。また、操舵方式にも大きな違いがある。在来船では、プロペラと舵の組み合わせで操船する。出入港時にはプロペラを短時間回して、大きな前進速力を得ることなく舵を操作することで方向転換を行う。また、潮の流れが速い時は、いっぱいに舵を切っているのに違う方向に行ったり、干潮の時には海底の影響を受けて方向転換しにくいこともあるそうだ。このようなことから操縦方法に慣れるのが大変だという。一方、電気推進船は船首船尾にそれぞれポッド型二重反転プロペラを採用している。ポッドが360度回転するため舵が不要である。さらに、二重反転プロペラでは、一方のプロペラが発生させる回転流のエネルギーをもう一方のプロペラで回収するので、推進効率が改善される。また、振動が少なく静かであるという特徴がある。在来船の客室では騒音69dB、振動77dBであり、振動を感じたり、騒々しいと感じるレベルであるが、 電気推進船の客室では騒音60dB、振動55dBであり、わずかな振動を感じる程度に抑えられている。実際に筆者も両船の客室と機関室を訪れ、その違いを体感した。在来船の客室では、出港時に騒音や振動を感じたが、電気推進船は騒音も感じられず静かで、とてもスムーズな出港だった。また、在来船の機関室では大声で話していても聞き取りづらいが、電気推進船では普通の会話を聞き取ることができて、似たようなエンジンルームでも用いる機械の性能で全然違う環境になるんだと感じた。

在来船と電気推進船の操船経験をもつ船長に話を伺うと、電気推進船の操船性能は高く、操船し易いということだった。船長も電気推進船を操縦するまでは、そんなに違いはないだろうと考えていたようだが、実際に乗ってみると意外と異なることが多いと感じたそうである。

5.おわりに

写真6 桜島丸機関室にて(左から2 番目筆者、中央に坂ノ下機関長、右に中野機関員)

今後の桜島フェリーの展開について伺った。平成26年に2隻目の電気推進船を導入する予定である。現在の6隻のうち、20年以上使用している一層積みの船2隻を新たな電気推進船(二層積み)1隻と入れ替えて輸送力の増加を図りつつ、5 隻体制で運航していくようだ。また、通常運航だけではなく特別な運航にも力を入れていく。昨年から行われている錦江湾魅力再発見クルーズのように、観光客のためのイベントにも積極的に取り組む予定である。例えば、修学旅行、結婚式等のいろんなイベントに対応できるように準備している。また、イベントのみならず、 会社の会議だったり学会の講演会など、様々な行事に使ってもらえるように大きく展開していく予定である。

今回の取材を通じて、桜島フェリーが人々の足としての交通手段というだけでなく、利用者のことを第一に考え、サービス精神に溢れたところなんだと感じた。印象に残ったのは、インタビューに答えてくださった方々が必ず"お客様の安全が第一"とおっしゃっていたことだ。実際に作業の様子も拝見していたが、ひとつひとつが丁寧に行われており、何よりも乗客を思う気持ちを大切にしている様子だった。このような精神を間近で感じることができ、これから社会に出て行く筆者にとって大きな糧となるだろう。

謝辞

最後に、今回の取材でお忙しい中、案内役を務めてくださった鹿児島市船舶局総務課、船舶運航課の職員の皆様、並びに桜島フェリー従業員、乗組員の皆様に厚く御礼申し上げます。また、このような貴重な機会を設けてくださった日本船舶海洋工学会並びに編集委員各位に深く御礼申し上げます。

別府 浩太(べっぷこうた)
鹿児島大学水産学部水産学科
漁業工学分野3年

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